分かることはできないだろうが、
心の中にとどめておこうと思う。
亡くなっていった命、生まれてくるはずだった命を忘れず、
いまある命、生まれてくる命を大切にしていきたい。
[2011年7月5日 朝日新聞から]
宮城・南三陸駐在 三浦 英之
「娘よ強く生きなさい」
海を見下ろす高台に立つ「南三陸ホテル観洋」の一室。
ここが私の仕事場であり、寝泊まりをする生活の場だ。
ホテルウーマンとして働く遠藤台子さん(58)は、
いつも笑顔で約500人の避難者や工事関係者らに接している。
笑みのわけを尋ねると、真剣な表情になって答えた。
「もうすぐ娘に子どもが生まれるんです」
遠藤さんの長女、江利香さん(27)は、
震災の6日前に結婚式を挙げた。
新郎(23)が、新居を構える石巻市に婚姻届を出しに行った日、
大地が揺れた。
翌日、新郎は遺体で見つかった。
近くの祖父母と妹を助けに行き、一緒に津波にのまれたらしい。
4人の遺体の前で泣き崩れる新郎の母(46)に江利香さんは言った。
「私をこのまま、お嫁さんにしてくれますか」
改めて婚姻届を出した。
石巻市は6月、
「婚姻届は津波で流失した」と判断し、
3月11日付けでの受理を認めた。
出産予定日は、今月上旬だという。
「長女に言ったんです。
強く生きなさい、あなたは母親なのよって」
新しく生まれてくる命を、遠藤さんたちは、
どんな笑顔で迎えるのだろう。
この家族の風景をしばらく、
日記につづっていきたいと思う。
0 件のコメント:
コメントを投稿